ツラクテモ、等身大ノ実物ヲ見ナケレバ、ニンゲン、滅ビマス〜藤原新也〜


「えっないちゃー!?」
今も忘れません。この時の声を。


 昔、軽度の事故を起こしてしまった事があります。
ブレーキから足を離し、アクセルを踏む前ニュートラル状態でした。
私は助手席の息子のチャイルドシートのベルトが外れていた事に気付き、
一瞬目をそちらへ・・・
そしたら、前方の車が急停車した事に気づかず、ゴツン!

そのわずか(?)な衝撃で息子がフロントガラスにゴッツーーン。(飛んだ)

・・・慌てました。 
他人さんの車を・・・/(-_-)\
あぁ、息子が・・・/(-_-)\

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車を路肩へ寄せ、車から飛び降りてまずぶつけてしまった方にお詫びを
「すいませんほんまにすいません!大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」

・・・この時、私はあまりに動揺していて、つい関西弁のイントネーションが出たんです。

相手の車には20代位の若い男性と、お母様らしき50代位の女性が乗っておられました。

そのお母様が、開口一番にこう言いました。

「えっ!ないちゃー・・・?」 すごく、不安そうな顔で。

 「?いえ、観光客ではありません。主人は宮古の人間です。」と返事をすると

「そうなの。良かった。ないちゃーだったらどうしようかと思った。」

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は・はい。・・はい?・・

お母様は私の息子が頭をぶつけた事を知り、息子の事を気遣ってくれました。

警察へ連絡をしないと・・・と携帯をとりましたが、お相手の方が「急いでいるから示談にして」と
おっしゃるので、とりあえず病院で受診していただく事をお願いし、互いの連絡先を交換、現場の写真とぶつけた箇所の写真を何枚か撮り
その方らは行っちゃいました。

泣きじゃくる息子。ポカンとしている娘。人生初の事故に震えが止まらない私。
保険会社に電話を入れ主人にも・・・。

気づいたらとうちゃん(舅)までも・・周りがワタワタと、動いてくれていました。

私達は翌日にお相手の御宅へ参じました。

 「誠にこの度は・・・」と、主人、とうちゃんも頭を下げて謝罪。

 『いえ、私達はたいした怪我もありませんし車も今日で修理が出来ますし・・
それにしてもねーこんな事行ったら失礼だけど、ぶつけられた相手がないちゃーだったらねーあれだし。島の方で良かった。』

・・・・。

お相手と、とうちゃんと主人が、いつのまにやら談笑していました。

私は所在なげにそれを聞いていました。(右から左でしたが・・・)

「では、又来週お見舞いに来させて頂きます。」

『もう良いですよ。ね。信頼できる人だと判ったし、あなたも小さい子供がいるから大変でしょう。』

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その後、数度、様子を見に行かせて頂きました。
お母様も息子さんも衝突の後遺症等は無く、車が元通りになっているのを再確認。

お母様が、『子供達に』と、お菓子をいっぱいくれました。

そして 『宮古嫁だと得をするよ。ないちゃーだと損だよ。』 と笑って、いました。


  ・・・その、言葉通りの 一件でした。


私は、自分が『宮古嫁』だから『得をする』場面にその後
何度も何度も、遭遇するのです。

    今も変わらず。。。

私は見た目が明らかにないちゃー面なので、どこへ行っても「あんたは大和か」や「ないちゃー?」
と聞かれます。

私は 「そうです。けど、宮古嫁です」 とズル賢く答えます。
そうすると話が弾む弾む。


ズル賢く、生き延びています。


私は。

  
   ソーダ水越シニ 世界ヲ拝ム 〜島嫁〜