04/10: おじいの揚げ豆腐
飛行機と船を乗り継いで、波照間島へ。
先日黒糖を送ってくれた、大好きなおじいに会いに行ってきた。
おじいはもと船乗りで、今は自分で建てた素泊まり民宿[西浜荘]をやっている。
4年ほど会いに行けずにいたので、波照間に着いたときは、
おじいに会える!と思って喜びがこみ上げた。
が、おじいはお出かけ中・・・。
3時半の船で行くって言ったのにぃ?。
しばらくすると、愛車のカブで帰ってきた。
「おじい!会いたかったよ〜!!」と大喜びの私に、
「魚 とってきたんだよぉ。」
淡々と、荷台から段ボールを下ろし、魚を並べはじめるおじい。
そう、おじいはいつ会っても日常通りなのだ。
「おじい、元気だった?」
「うん 元気だったよぉ。
この魚はぁ ここにこんなのが付いてるよ。
こっちのはこんな目をしている。タコも2匹とったよぉ。」
おじいは挨拶もそこそこ、ひたすら魚の説明をする。
常にマイペースだ。
でも地元の人が言うには、
3週間ほど前から、私が来ることを嬉しそうにみんなに話してくれていたそうだ。
「ほら こんな眼鏡付けて潜るんだよぉ。」
おじいの道具はみんな、使い込まれて味がある。
●
久しぶりに行ってみて気付いたのだが、私にとっての波照間島は、
西浜荘の入口のベンチに座って見える景色と、
おじいの居る使い込まれた台所(屋外に設置されている)、
そしてその奥にある2畳ほどの小上がりだ。
よく考えてみると、あんなに小さな島なのに、
唯一の観光施設・星空観測タワーにすら行ったことがない。
今回の滞在中も、ニシ浜に1度行ったくらいで終わってしまった。
でも私はそれで充分なのだ。
このおじいの魚の説明を聞いたり、畑からとったヘチマをむく横でおしゃべりしたり、
漁の網に絡まった珊瑚をひたすら外したり、
いつも作ってくれる素朴で美味しいごはんをご馳走になったり、
食休みをするおじいの隣に座っていたり、そんな時間が何よりも好きだから。
まな板も、鍋も、箸も、手作りのウロコ取りも、みんな使い込まれている。
古くて傷だらけで、大切にされている道具たち。
夕方になると、新聞紙を敷き詰めた小さな小さな小上がりに、
おじいと手伝いの女の子と3人で、膝を立てて座る。
カジキと採れたて大根の汁が入った鍋を囲んで乾杯だ。
「おっじいと 一緒に あっり カンパ?イ♪」
4年前も使っていたこのフレーズ、今でも毎日二人で楽しんでいるそうだ。
グラスにビールをつぐたびに、その日そこにいるひとり一人の名前を入れながら。
今はバージョンアップして、このあとに、
「えいやっはっ! やい! やい! ぃやい!」
という、棒踊りのフレーズにあわせて、
あと三回乾杯する手順(3回目はちょっとため気味に)が加わっていた。
毎日毎回繰り返すわけだけど、
これをやった後の何とも言えない和んだ空気が好きだ。
●
入口のベンチに座っていると繰り広げられる、日常のヒトコマがまた素敵。
とある夕暮れ、軽トラが止まったと思ったら、何かを置いて、再び走り去った。
さっき、「魚要るかぁ?」と聞いてきた海人だ。
無言で立ち去ったその跡には・・・
う〜ん、いたってシンプル。
これをまた、無言で受け取るおじい。
晩の刺身が増えた。
毎日刺身を食べる。
タコ・カツオ・イラブチャ・・・どれも新鮮だ。
「お腹いっぱいになって あと2切れが入らないときは
スシにすると いいんだよぉ。」
そう言っておじいは、炊飯器からごはんを一口分よそり、刺身を乗せて食べる。
そのアバウトさが大好きだ。
そして実際その「スシ」は、満腹のお腹にあと数切れ入るのだ。
●
こんな風にして私の滞在は過ぎていく。
大したことは何もしていないように見えて、特別な時間だ。
ここに居ると、いつも大切な何かに触れたような気がする。
今回の一番の思いでは、おじいが揚げた豆腐だ。
「石垣に行けば 揚げた豆腐でも なんでも 店に行けば売ってるけどぉ
島には あんまり ものがないから 自分でなんでもやるんだよぉ。」
揚げたての豆腐を、ごはんの上に乗せてくれた。
そこにサッと醤油をかける。
油と醤油がごはんの上でいい具合にとろけ、
こんなに美味しいものがこの世にあったのか、と感動した。
シンプル イズ ザ ベスト。
おじいはきっと、こんな言葉、必要ないんだろうな・・。
食休みするおじいに聞いた。
「おじいは旅行には行かないの?」
「毎日 働くのが 一番さぁ。
働いてぇ たまに休んでぇ ごはん食べて 寝るのがいいんだよ。」
●
5日目の朝、帰りの船の時間だ。
波が3mに達し、念のため、なんとか出てきた1便で帰ることにしたのだ。
おじいは自転車のタイヤに空気を入れている。
「おじい、もう行かなきゃ。色々ありがとね。また来るからね。」
別れを惜しむ私に、ちらっと顔を上げて一言。
「はぁい いってらっしゃい。」
そう、おじいはいつ帰っても日常通りなのだ。
先日黒糖を送ってくれた、大好きなおじいに会いに行ってきた。
おじいはもと船乗りで、今は自分で建てた素泊まり民宿[西浜荘]をやっている。
4年ほど会いに行けずにいたので、波照間に着いたときは、
おじいに会える!と思って喜びがこみ上げた。
が、おじいはお出かけ中・・・。
3時半の船で行くって言ったのにぃ?。
しばらくすると、愛車のカブで帰ってきた。
「おじい!会いたかったよ〜!!」と大喜びの私に、
「魚 とってきたんだよぉ。」
淡々と、荷台から段ボールを下ろし、魚を並べはじめるおじい。
そう、おじいはいつ会っても日常通りなのだ。
「おじい、元気だった?」
「うん 元気だったよぉ。
この魚はぁ ここにこんなのが付いてるよ。
こっちのはこんな目をしている。タコも2匹とったよぉ。」
おじいは挨拶もそこそこ、ひたすら魚の説明をする。
常にマイペースだ。
でも地元の人が言うには、
3週間ほど前から、私が来ることを嬉しそうにみんなに話してくれていたそうだ。
「ほら こんな眼鏡付けて潜るんだよぉ。」
おじいの道具はみんな、使い込まれて味がある。
●
久しぶりに行ってみて気付いたのだが、私にとっての波照間島は、
西浜荘の入口のベンチに座って見える景色と、
おじいの居る使い込まれた台所(屋外に設置されている)、
そしてその奥にある2畳ほどの小上がりだ。
よく考えてみると、あんなに小さな島なのに、
唯一の観光施設・星空観測タワーにすら行ったことがない。
今回の滞在中も、ニシ浜に1度行ったくらいで終わってしまった。
でも私はそれで充分なのだ。
このおじいの魚の説明を聞いたり、畑からとったヘチマをむく横でおしゃべりしたり、
漁の網に絡まった珊瑚をひたすら外したり、
いつも作ってくれる素朴で美味しいごはんをご馳走になったり、
食休みをするおじいの隣に座っていたり、そんな時間が何よりも好きだから。
まな板も、鍋も、箸も、手作りのウロコ取りも、みんな使い込まれている。
古くて傷だらけで、大切にされている道具たち。
夕方になると、新聞紙を敷き詰めた小さな小さな小上がりに、
おじいと手伝いの女の子と3人で、膝を立てて座る。
カジキと採れたて大根の汁が入った鍋を囲んで乾杯だ。
「おっじいと 一緒に あっり カンパ?イ♪」
4年前も使っていたこのフレーズ、今でも毎日二人で楽しんでいるそうだ。
グラスにビールをつぐたびに、その日そこにいるひとり一人の名前を入れながら。
今はバージョンアップして、このあとに、
「えいやっはっ! やい! やい! ぃやい!」
という、棒踊りのフレーズにあわせて、
あと三回乾杯する手順(3回目はちょっとため気味に)が加わっていた。
毎日毎回繰り返すわけだけど、
これをやった後の何とも言えない和んだ空気が好きだ。
●
入口のベンチに座っていると繰り広げられる、日常のヒトコマがまた素敵。
とある夕暮れ、軽トラが止まったと思ったら、何かを置いて、再び走り去った。
さっき、「魚要るかぁ?」と聞いてきた海人だ。
無言で立ち去ったその跡には・・・
う〜ん、いたってシンプル。
これをまた、無言で受け取るおじい。
晩の刺身が増えた。
毎日刺身を食べる。
タコ・カツオ・イラブチャ・・・どれも新鮮だ。
「お腹いっぱいになって あと2切れが入らないときは
スシにすると いいんだよぉ。」
そう言っておじいは、炊飯器からごはんを一口分よそり、刺身を乗せて食べる。
そのアバウトさが大好きだ。
そして実際その「スシ」は、満腹のお腹にあと数切れ入るのだ。
●
こんな風にして私の滞在は過ぎていく。
大したことは何もしていないように見えて、特別な時間だ。
ここに居ると、いつも大切な何かに触れたような気がする。
今回の一番の思いでは、おじいが揚げた豆腐だ。
「石垣に行けば 揚げた豆腐でも なんでも 店に行けば売ってるけどぉ
島には あんまり ものがないから 自分でなんでもやるんだよぉ。」
揚げたての豆腐を、ごはんの上に乗せてくれた。
そこにサッと醤油をかける。
油と醤油がごはんの上でいい具合にとろけ、
こんなに美味しいものがこの世にあったのか、と感動した。
シンプル イズ ザ ベスト。
おじいはきっと、こんな言葉、必要ないんだろうな・・。
食休みするおじいに聞いた。
「おじいは旅行には行かないの?」
「毎日 働くのが 一番さぁ。
働いてぇ たまに休んでぇ ごはん食べて 寝るのがいいんだよ。」
●
5日目の朝、帰りの船の時間だ。
波が3mに達し、念のため、なんとか出てきた1便で帰ることにしたのだ。
おじいは自転車のタイヤに空気を入れている。
「おじい、もう行かなきゃ。色々ありがとね。また来るからね。」
別れを惜しむ私に、ちらっと顔を上げて一言。
「はぁい いってらっしゃい。」
そう、おじいはいつ帰っても日常通りなのだ。
wrote:
伝わるよ?
なんてったって生で味わっちゃったもんね。
あのゆっくりとした時間の流れが、だいぶ昔のように感じるくらい今はせかせかしているよ。
シンプルなんて言葉、ホントおじいにはないんだはずね。だってそれが日常だもの。
たった1泊だったけど、とても大切な時間でした。
ありがとう。