今朝、とある農道をポコポコ走っていると、
知らないおばあがこっちを見て手招きしていた・・・ような気がした。

気になって車を停めると、やっぱり私を止めていたようで何かを言っている。
どうやらおばあは、畑帰りにヒッチハイクして帰りたかったらしいのだ。

おばあにヒッチハイクされたのは、
大きな台風(14号)でバスがストップしたとき以来。


取れたての豆が入った大きな袋を、ヨイショと車に積むと、
泥が付いてるから待っててねと、作業着を脱ぎはじめた。

せっかくだから家まで送ってあげようと思ったけれど、近所だからすぐそこまでで良いと言う。
そのすぐそこまでっていうのが、本当にすぐそこで、
距離にしてほんの200?300m。
荷物が重かったのと、急な坂が一カ所あるから乗せて欲しかったのかな?

とにかくおばあを乗せて走りだした。
その、ほんの2分ほどの間のできごと。



会話は今までに何度となく繰り返されたおきまりの内容から始まった。

内地の人?
言葉が違うからすぐにわかるよ。
内地の言葉は丁寧だからね。
8年も住んでるの。
宮古が好きで来たならいいことだ。


でも、このおばあ、ちょっと雰囲気がある感じ。
なんだろう・・・目の力が強くて、真っ直ぐこっちを見ている感じ。
それに、おばあの方も、宮古の言葉ではないような・・・気がした。

今日は急に冷えますね?
なんて、軽い会話をしていただけなのに、おばあが突然・・・


宮古の人はね、親しくなったら本当に面倒見が良くなるんだよ。
イヤと思うことがあっても、避けて通ろうとするんじゃなくて、歩み寄りなさい。
あ、もうここでいいさ、家はここ曲がった所だから。
ありがとう。

といって車を降りた。
そして最後に、

年寄りはみんな、そんな風にしてくれたら喜ぶんだよ。

と言って、豆を抱えて去っていった。



私は、驚いた。
なぜならこの2?3日、人間関係でちょっと悩んでいたから。

お年寄りが多いエリアに住んでいるせいか、おばあは、宮古の年寄りは、という設定で話していたようだったけれど、私には、私のシチュエーションを知っていてアドヴァイスをくれているとしか思えない位、どんぴしゃだったのだ。

それも、ほんの一瞬の、突然の会話。



私は[アルケミスト]という小説に出てくる、セイラムの王様・メルキゼデックを思い出した。
この王様は、運命を実現しかけているのにもう少しであきらめそうになっている人の前に、色々な形となって現れるという。

時にはひとつの解決法だったり、時には危機一髪の時に物事をわかり易くしてやったり、また別の時には石ころになってその人の目の前に現れる時もあると。

もっと他のことも色々しているけれど、ほとんどの場合、人は彼ががやってくれたこととは気付かないのだという。

私は、神様のような不思議な存在のこの王様が、今朝はおばあのヒッチハイカーになって、私の目の前に現れてくれたんじゃないかと思った。

そのぐらい不思議な出来事だったし、おばあの目は強かったから。


なんだか物語の中に迷い込んだような気分。

きっと、私たちの周りにも、王様は沢山のメッセージやチャンスという形で
姿を現してくれているんじゃないかな。
それに気付く人もいればそうでない人もいる。
私は、そんな小さなきっかけに気付くことの出来る柔軟さを
いつも持っていたいなあと、思った。



王様は言う。

宝物は流れる水の力によって姿を現し、また同じ流れによって姿を隠すのだよ。