長い間誰も住んでいなかった大きな家が、取り壊されることになったときの話。

ここに住んでいたおばぁはしばらく前に娘に引き取られ、島外に引っ越したたのですが、家の中は家族で住んで商売もやっていた時のままになっていたので、色々な物がそのまま残されていました。

そこから時間が経過して、今となっては昭和レトロで素敵な感じになった物たち、そしてまだまだ使える物たちがいっぱいありました。

家電、食器、家具、ピアノ、とりあえずなんとなくカッコイイもの・・・・。

家と一緒に全てが壊されてゴミになってしまうと聞き、数日後、改めてこの家から物を持ち出そうということになりました。


自分の好きな物、要る物だけを持っていきなって言われたのに、

私は家中に溢れていたまだ使える物がもったいなくてしょうがなく、自分には必要ないのに、とにかく車いっぱい持ち帰って配るなりフリマするなりしたいという衝動に駆られました。

特に、ピアノ。
今からでももまたピアノを練習できたらな〜なんて舞い上がって、うちに置いても近所迷惑なのに、なんとかしてひきとれないだろうかと、頭が取り憑かれていました。

その一方では、自分には必要のない物を、根こそぎその家から取ってくるのもどうなんだろう・・・・とちょっとした違和感も感じていました。

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すると面白いことが。

決行予定日の前日、色んな人がわいわい集まっている場で、顔見知り程度の知人に突然話しかけられたのです。

「チハルちゃんの魂が伝えたがってる言葉があるんだけど、言って良いかな?」

ええ??
私の魂が??なんて??

「力を抜いてって言ってるよ。」

ほえ〜。


あまりにも突然でちょっと面白かったので、しばらく話をしました。

力ってもしかしてこのことかな?と、
取り壊される家から物を持って帰りたい衝動に駆られていることを話しました。

すると彼は、
「人それぞれ運命の引きがあるんだから、その人が本当に必要な物はその人の力で巡ってくるから、他人が心配して無理矢理手に入れなくても良いんだよ」と。

う〜ん、なるほど。
人それぞれに、運命の引きがある・・・そうだよね。

でも、ピアノは!?
ピアノがブルドーザーで家ごと壊されちゃうのが残念で仕方ないの!

「そういう気持ちがあるんだったら、ピアノをなでてあげて一言、お疲れさまって言ってあげたらいいよ」

ええ〜そんな考え方、今までしたことなかったっ!

でも、なんだかやけに納得して家に帰ったのでした。

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さてその翌日、予定決行日。
朝起きるとまだ、もったいない、欲しい、あげたい、などという気持ちが治まっていませんでした。

そうじゃなくて、大きな流れの中に身を任せようと、瞑想。
しばらくすると物に関しての気持ちがスッと軽くなり、自分の心に響いた物だけを頂いて帰ろう、そしてもし不必要だったら必要な人にまわそう、と思うことが出来ました。

でもピアノは・・・?
ピアノがゴミになっちゃうなんて・・・!
でもうちにあってもしょうがないな・・・でも・・・でも・・・
もしブレス(カフェ)にあったらすごく良いんじゃないかな!!!???

そうだ今日、もしも、物を取りに行く前に、オーナーから電話がかかってくるなんていう出来事が起きたら、普通はないんだけど万が一あったら、提案してみよう。
そうならなかったらピアノさんにお別れしよう。

そう思えるようになり、気持ちが落ち着きました。

なんだかすがすがしい気分。
衝動が治まり、物に対する気持ちがなんだか今までと違っていて、嬉しい感じ。



そんな気持ち良さの中で、まずは午前中の仕事をして・・・
そして・・・仕事が終わって携帯を見てみると・・・
なんと、オーナーからの着信が!

さすがにビックリしてかけ直してみると、ちょっとした用事でした。
そこで思い切って、でも力を入れずに聞いてみました。

あのー、捨てられちゃうピアノがあるんですけど、お店にいかがですか?

すると
「ちょうどピアノのライブが入ることになっていて、ピアノのレンタルを考えていた所なんだよ」

おお〜〜!!これはすごい展開〜〜!!

すぐにトラックで引き取りに来てくれました。



ピアノは私を介してそこに行く流れだったんだ〜!
嬉しい〜!


人も物も、それぞれに、それぞれの運命の引きがある。
だから、私がそこに力を入れてどうこうしなくてもいいんだ。
むしろ力を抜いて大きな流れに全てをゆだると、必要な物事が必要な所にポンと収まるんだな〜。

なんだかとっても楽しくて、そして成長できたような気がする出来事でした。