Archives

You are currently viewing archive for August 2006

2006/08/30

『海辺の植物/ソナレムグラ』

 ソナレムグラの白く可憐な花を見ると、とても勇気づけられる。

 和名は「磯馴葎」と書く。磯に馴れた草といった意味で、海に最も近いと所に生える植物だ。



 海に近いところというのは、言うまでもなく、植物にとってとても厳しい環境だ。台風でもくれば、海水をもろに浴びるだろうし、恒常的に海風にさらされる。
 さらには、焦がすような日差しと海からの照り返し、つまり、熱と乾燥にも耐えなければならない。

 そのため葉は、水分をいっぱい貯えた多肉質で、ぷりぷりしている。表面には光沢があり、光や熱から身を守っている。色は鮮やかな黄緑色で、葉形もとてもかわいらしい。



 花がまた美しい。白い四枚の花弁を、小さく広げる。気易く触るのが憚られるほど凛とした清楚な花だ。写真ではわかりづらいが、花全体の大きさが1cmにも満たない。目を凝らさないと、見過ごしてしまう。


 この植物で、ぼくが一番不思議に思ったのは、岩の割れ目や、隆起珊瑚礁の凹みなどゴツゴツした岩のほんの少しの隙間に根付いていることだ。そこには、土や砂など無く、根を伸ばすことなんて不可能なように見える。



 以前、植物生態学講座の仲田先生に尋ねてみた。

 「どうして、砂もないゴツゴツした岩に、根付くことができるんですか?」

 「君は砂がないというけれど、ここには、ソナレムグラにとっては充分な量の砂があっ  たんですよ。
  ここに、落ちてきた種子は芽吹くことができたんですから。
  植物の視点になって、考えることも必要なんですね。」

 ぼくにとっては目から鱗が落ちるほど、回答だった。植物は植物の視点になって考えなければわからないことを、気がつかせてくれた。
 
 芽吹いた後は、ほんのわずかな隙間に根を伸ばし、時には岩を溶かしながら、しっかりと固着して成長していく。その力強さに脱帽する。そして今、ソナレムグラは、白く可憐な花の時期を迎えている。

 皆さんも海辺の岩場を探して、ソナレムグラを観察してみてください!
Posted by: kamome カテゴリー: 植物

2006/08/23

『砂漠の夜の物語』

今回は、都合により書くことができなかったので、以前書いたものを載せたいと思います。宮古のことではないし、少し長いのですが、面白いと思うので、是非読んでください。

?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・?・

 『あっ、やっぱり負けた。』

 十二月のある夜、僕はモロッコのサハラ砂漠にある安ホテルで、賭けトランプをして遊んでいた。賭けていたのは、ヨーグルト。大した金額ではないが、ここは砂漠のど真ん中、五キロ離れた名もないオアシスまで買いに行かなければならなかった。


『シェビ砂丘』

 僕はちょうど十日前、魅惑的なイスラム世界と広大な砂漠を旅するラクダの隊商に憧れ、初めての海外、初めての一人旅に出た。

 『アラジンと魔法のランプ』『アリババと40人の盗賊』『シンドバットの冒険』・・・幼い頃、胸を躍らせた物語の世界がまだそこにあるような気がしていていた。また、どこかで読んだ文章に、モロッコのサハラ砂漠は世界で一番美しいとあり、それ以来、行き先はモロッコに定まった。

 カサブランカから路線バスを乗り継ぎ、最後は乗合ジープでサハラ砂漠の道無き道を一時間半揺られ、砂丘の目の前のホテルに降りたった。周りの風景は、三六〇度砂と荒れ地の世界、ジープが去った後は耳が聞こえなくなったと思うほどの静寂に包まれた。

 砂漠での生活は、毎日が新鮮だった。テレビもなければ、やることもない。でも何もないことに満足していた。毎日一リットル入りのミネラルウォーターをザックに入れ、定規で引いたようにまっすぐな砂丘の稜線を歩いた。地平線の果てまで続くスケールの大きさ、何時間触っていても飽きない砂の感触、雲一つない地平線に沈む夕日、同じ地球にこんな世界が広がっていることへ驚き通しだった。


『砂丘の稜線』

 ホテルには、僕と井戸の工事をしに来ていたハッサンのほか宿泊している人は誰もいなかった。従業員二人を含めた僕ら四人は、みな同年代ですぐに仲良くなった。夜はきまってランプを囲みながら片言のアラビア語と英語でいろいろなことを話したり、ゲームをして過ごした。


 その夜、僕らはヨーグルトを賭け、二組に分かれてトランプをした。僕とハッサンのチームは、初心者の僕が足を引っ張ったため、負けてしまった。僕たちは、地図にも載っていない小さな集落までヨーグルトを買いに行かなければならなかった。
 新月の夜空には、数え切れないほど星が瞬き、ギリシャ神話の英雄たちを探すのも大変だった。僕は天の川の悠々とした流れに見とれながら、夜のサハラ散歩を楽しんだ。

 ヨーグルトを買い、ホテルへ帰ろうとした時、僕は一瞬、言葉を失った。ホテルが全く見えないのだ。行きは微かな街灯りを頼りに歩いてきたが、帰りはそうはいかなかった。ホテルには電気が通っていないため、どこを目指して帰ればいいのかわからなかった。僕は、帰路のことなど全く考えなかった軽率さに、怒りと情けなさが混じり合ったような気持ちになった。
 ところが、ハッサンは「こっちだ、こっちだ。」と手招きし、真っ暗闇の中をずんずん進んでいった。僕にはただ闇に向かって歩いてるようにしか思えなかった。後ろを付いていくだけの僕の心の中は、だんだん不安になっていった。

  『ハッサンはどこに行こうとしているのか???』
  『こんな砂漠のど真ん中で遭難したら、助かるわけがない。のたれ死んでも誰にも発見されないだろうな・・・。』
  『ハッサンは実は悪いヤツで、誰もいないところへ行って僕の財布を奪おうとしているのか?』

  最後には、
  『ハッサン、命だけは助けてくれ!』と心の中で叫んでいた。
 
 前を行くハッサンの体格は昼間より大きくガッチリ見えた。僕の歩幅はだんだん狭くなり、二人の距離が広がっていった。それに気づいたハッサンは、僕に併せてゆっくり並んで歩きだした。僕は不安をさとられないように、下を向いたまま歩いた。初めて海外旅行をする不安、全く違う生活習慣もった人々への不安、人生がこんなにも簡単に終わってしまうかもしれない不安が次から次へとこみ上げて、胸から溢れそうだった。僕は、止まることも走ることもできず、ただ黙々と歩く以外なかった。


 そんな時だった。ハッサンが僕の左手をギュッとにぎりしめた。彼は不安を感じている僕の気配を感じとって、「だいじょぶだよ」という言葉の替わりに手をつないでくれたのだ。

 ハッサンのゴツゴツした手から、やさしさが伝わってきてた。僕の不安は一瞬のうちに消え、目からは涙があふれだした。今度は恥ずかしくて顔が上げられなかった。僕は、『シュクラン(ありがとう)』と心の中で何度もつぶやいた。


『ハッサン』

 この出来事の後から僕の旅は急に楽になった。人を信じることと疑うことの狭間で揺れ動いていた僕の不安をハッサンが溶かしてくれたからだろう。
 『言葉を使わなくても気持ちは伝わること』、そして『相手を思いやる心は世界共通であること』を僕は教えてもらった。僕はこのことを一生忘れないだろう。ハッサンありがとう。
 そして、世界がもっと平和でありますように!


『夕暮れの砂丘』
Posted by: kamome カテゴリー: etc.

2006/08/16

『パッションフルーツ』

 完熟してしわしわになったパッションフルーツを朝食に食べるのが、ぼくは大好きだ。南国の豊潤な香りとさわやかな酸味が口いっぱいに広がり、眠い目と霧のかかった意識を目覚めさせてくれる。幸せな気持ちで一日が始められる。

 夜にもこだわりの食べ方がある。半分に切った実をかき混ぜて、その中に泡盛を注ぎ入れる。生パッションフルーツ酒だ。
こんな贅沢なお酒の飲み方を、他にありますか?


『THIS IS PASSIONFRUITS』
*しわしわになるまで追熟してから食べると、甘みが増しておいしいです。

 先日、無農薬でパッションフルーツの専門農園を営んでいる「さかのファーム」を訪れた。

パッションフルーツの特徴は、
 ・果物時計草とも言われ、花が面白い形をしていること。
 ・花は一番暑い真昼間に咲き、その時に受粉しないと実がつかないこと。
 ・受粉してから収穫するまでに、50日間もかかること。
 ・受精した花粉の数が多いほど、実の中身が多いこと。
などなど、知らないことばかりだった。


『今、何時?(パッションフルーツの花)』

 そして、一般的な収穫時期は、台風被害を避けるためもう終わってしまうが、さかのファームでは、試行錯誤を重ねた結果、今からも収穫できる独自の栽培方法を行っている。
 この時期の照りつける日差しを浴びると、甘味と香りがより一層増すそうだ。(糖度は、マンゴーを遥かに凌ぐ20度以上!)

 坂野さん夫婦が、パッションフルーツを作り始めたきっかけも、また面白い。

 ご主人の隆也さんは、生粋の江戸っ子で、東京の会社にお勤めだったが、元気なうちから農業をやりたいという理由で早期退職をし、6年前に奥さんの実家である慶良間諸島の阿嘉島に移住した。
 はじめ農業の知識はほとんど無く、本とインターネットで勉強しながら、パパイヤを始めとする南国の果実をいろいろ育てていた。しかし、台風が直撃し、ほとんどが全滅してしまう。翌年、息を吹き返したのはパッションフルーツだけで、そこに惚れ込みを専門に作り始めるようになった。
 山がちな阿嘉島は耕地面積が狭く、広い土地と空を求めて3年前宮古島へさらに移住することになった。

 なんという決断力と行動力!そして、勤勉さ。坂野さん年齢で、ゼロからスタートする勇気を持っている人は、なかなかいないのではなかろうか。


『夫婦で果樹園経営』(憧れです)

 そんな坂野さん夫婦の努力の賜物が、美味しくないはずがない。パッションフルーツの印象を覆すような豊潤な香りと甘さ、その前にまず、大きさに驚くだろう。普通のパッションの1.5倍?2倍くらいはある。
 
 台風の影響で表面に傷が入ってしまったもの(中身は生食用といっしょ)を使って、ジャムの生産も最近始めている。自分の農園で取れたパッションフルーツのみを使い、砂糖を加えるだけで、添加物など一切入っていない。
 また種ごと入っているので、フルーツと同じ食感も楽しめる。パッションの命ともいえる特有の香りが生きていて、まさにフルーツを瓶詰めした感じだ。


*お土産にも最適。
*撮影協力「あか浜やー
あか浜やーでも購入できます。

 これからもさかのファームは、安全でおいしいパッションフルーツを作り続けてくれるだろう。
 がんばってもの作りをしている人々が、もっと脚光を浴び、そして多くの人にこのおいしさを味わって欲しいと思う。
 生パッションフルーツ酒、ほんとに最高ですよ。

さかのファーム』のお問い合わせ先
住所:沖縄県宮古島市下地字嘉手苅797
電話/FAX:
ホームページ:http://www.ann.hi-ho.ne.jp/tasakano/
Eメール:
Posted by: kamome カテゴリー: 食べ物

2006/08/09

『八重干瀬クルーズ&シュノーケルツアー』

青。
透明度が高い、水色。
下に根サンゴがある、濃紺。
大量のバスクリンを流してしまったような、ブルー。
人々の心を躍らせる、海の色。


『池間大橋をくぐる』

 宮古島と言えば、沖縄屈指の海の美しさで有名だが、さらに船で1時間程度行ったところにある八重干瀬は、日本最大級のサンゴ礁群(周囲約25km)を誇り、漁業面からも観光面からもとても貴重な海域だ。干潮時には一部が表出し、満潮時には水の中に沈んでしまうところから、「幻の大陸」とも言われている。(『八重干瀬観光上陸』参照)

 今回は、マーレクルーズの八重干瀬クルーズ&シュノーケルツアーに参加した。まさに宮古の魅力を全て凝縮したようなツアーだった。


 ぼくは、港に停泊している船を見たときから、テンションがうなぎ上りになった。
 いっぱい泊まっている中で、これが一番と思ってたのが、マーレクルーズの船だったからだ。白鳥のように優雅な外装と充実した内装設備で、船に乗っているだけで、満足してしまう。
 船長の棚原さんを始め、スタッフもみな明るく親切で、八重干瀬に関するレクチャーやシュノーケルの使い方を丁寧に教えてくれる。


『紳士的な棚原船長』
 
 荷川取港を出港し、砂山ビーチや狩俣集落を右手に見ながら北上していくと、池間大橋が近づいてくる。この時、ぼくのテンションは、完全に振り切った。普段から宮古の海を見慣れているけれど、この色には、言葉も出ない・・・。(最初の写真を見て下さい。)

 八重干瀬に着き、海に潜ると、さらに圧倒される。珊瑚群落の一つ一つが、普段シュノーケルで見ているものの数倍あり、それがずっと続いている。その周りには、色とりどりの魚たちが遊んでいる。
 ドロップオフになっている深場へ行くと、ぼくの視界を覆うほどたくさんの魚が群れをなし、泳いでいた。


『VIVA LA VITA(生き物万歳)』

 魚の群れを見ていると、自分の知らない世界で繰り広げられる無数の命の営みに、瑞々しい生の力強さを感じた。(メキシコの画家フリーダカーロの『VIVA LA VITA』という絵を見たときのことをふと思い出したので、同じ題名にした。)
 ただ、命の躍動感に興奮した。

 八重干瀬は言うまでもなく、クルーザーの先端から見る絶景や潮風の心地良さなど、言葉では伝えきれないほど貴重で優雅な体験だった。せっかく宮古を訪れるなら、こんな素敵な休日を過ごしてみては、いかがでしょうか。

マーレクルーズのお問い合わせ」
住所:宮古島市平良字下里1072-9
TEL/FAX:
ホームページ:http://www.cosmos.ne.jp/%7Emare-c/
E-mail:
*小さなお子さんでも、スタッフがしっかり面倒を見てガイドしてくれるので、安心です。
*マーレクルーズでは、サンセットクルーズもやっています。おいしいお料理&ワイン付きです。


『船から見る夕日』


『じゃがらんださんの絶品料理』
Posted by: kamome カテゴリー: 海

2006/08/02

『出会うということ』

 「宮古に住んでいる方ですか?」

 ぼくたちは、この一言から始まった。

 4月中旬、トライアスロン大会前日のよく晴れた午後、大野さん夫婦とお友達の選手の方々が、PaniPaniでお茶を飲んでいる所に、ぼくは偶然居合わせた。(『来間島の休日』参照)

 大野さんは、6年連続出場されていて、体力はもちろん、強靱な精神力の持っている人だと思った。トライアスロンは未知の世界だったので、ただただ尊敬のまなざしで、練習のことやお互いの話をした。
 だんだん親近感が湧いてきて、明日は全力を出し切り、完走できるようにと強く願った。


『4月のぼくら』Cafe PaniPaniにて

 ぼくたちは、ほんの短い時間を、共に過ごしただけだったが、偶然居合わせたトライアスロン選手と島民という関係で終わらなかった。
 大会後も、かもめ通信を読んでくれたり、メールをくれたりしたからだ。

 そして、この夏の家族旅行に宮古を選んでくれ、日曜日に再開を果たした。今度は元気いっぱいの子どもたちと、上田さんご一家といっしょに。

 ぼくたちは、とっておきのビーチで遊んだり、八重干瀬でシュノーケルをした。みな海に夢中になった。
 特に子供たちがじっと海を見つめている姿が印象的だった。彼らは海の中の世界をどのなふうに見ているのだろうか。


『何を思うんだろう・・・』

 きっとあの時、大野さんが話しかけてくれなかったら、また会うことはきっと無かった。そして、PaniPani ・パタゴニア・名嘉睦念さん・星野道夫さん、そして宮古島が好きだという共通点がなければ、10歳も年が離れたぼくらがこんなにも仲良くなれなかっただろう。ぼくらに橋を架けてくれた全てのものに感謝したくなった。
 そして今回の出来事通して、これからも関係が続いていくだろうと確信した。

 こんなふうな偶然な出会いが、これからも待ち受けている思うと、毎日がワクワクし、明るい気持ちになる。
 出会うということが、人生に彩りを与えてくれるのだろう。


『素晴らしい笑顔』
Posted by: kamome カテゴリー: 生活