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2006/04/26

『来間島の休日』

 最近、仕事が忙しく、心と体がきちんとした休養を欲していた。
 ぼくは、来間島のcafe PaniPaniで大好きなアイスカフェラテを飲み、長間浜でのんびりすることにした。

 お店には、明日のトライアスロン大会に出場する選手たちが、お茶を飲みながらくつろいでいた。カウンターで少し話していると、毎年、この大会を楽しみにしていることがヒシヒシと伝わってきた。そして、寸暇を惜しんでコツコツと練習を重ねてきた選手たちに心から敬意を抱き、この気持ちを応援やボランティアをすることで伝えたいと思った。


『勇敢なトライアスリート』cafe Pani Paniにて

 そこで知り合った選手たちと、長間浜へ行った。少ししたら帰ってしまったけれど、この浜に来たことをとても喜んでくれた。

 ぼくは一人で砂浜に残り、貝を探しながら歩き回った。少し疲れたので、流木に腰をおろした。あまりの座り心地のよさに、木の裏に名前を書きたくなった。
 頭の中を空にして、繰り返し繰り返しやってくる波をただ眺めていた。盛り上がり、崩れていく。ただそれだけのことだけど、どれ一つ同じ形をしたものはなかった。ぼくは波が崩れる時の、静から動へ移り変わる瞬間がとても好きだった。
 辺りは、波の音で満たされていた。


『comfortable seat』来間島長間浜にて

 ぼくと海との間の砂浜に、小さな生き物が動いていた。ツノメガニだ。砂と同じ色をしているので、目を凝らさないとどこにいるのかわからない。もっと近くで見るために、そっと立ち上がったが、そのわずかな振動を察知して、小さな住みかに隠れてしまった。ぼくは諦めて、海をボーっと眺めながら、カニが動き出すのを待った。

 ツノメガニは、また右に左にぼくの前を横切っていった。押し寄せる波に向かって行くものもいた。みな心の赴くままに移動しているが、行き先を決めたら、チョロQのようにすばやく進んでいく。迷いなど全くないように思えた。

 人気のない砂浜は、ツノメガニたちのものだ。ぼくは流木の一部になったつもりで、ツノメガニの様子を飽きることなく眺め続けた。

Posted by: kamome カテゴリー: 生活

2006/04/19

『シロバナノアサガオ』

 シロバナノアサガオは、ぼくの大好きな植物だ。
初めて見つけたときは、とてもうれしくて、その日一日が、特別な日のようにごきげんだった。


『This is しろばなのあさがお』

 ぼくにとってアサガオといえば、小学生の夏休みに無理やりやらされた観察記録の対象物くらいでしかなかった。プロレスのリングのように四つ角に棒を立てた鉢とにらめっこして、こつこつと日々の成長を記録した。

 アサガオの花の形は面白い。花びらの数は、1枚とカウントすべきなのか、切り口みたいなところから別れているとして5枚というべきか。
どちらだってかまわないけれど、その丸みを帯びた柔らかな花の形、おしべとめしべにフィットする芯、花と花のつなぎ目のシャープなライン・・・・・
ぼくはとても好きだ。

 シロバナノアサガオは文字通り、白い花をつけている。花の大きさは、大きくても3cm程度、とても小さくてかわいらしい花だ。
 白い花を見ていると、心の中の純粋さとか、潔白さとかが共鳴する。共鳴するというより、それらが突つかれている感じかもしれない。そして、グレーかかった心の中を、少しだけ白に近づけてくれる。

 みずみずしい緑色の葉っぱと白い花は、とても相性のいい。紅白饅頭のように、2つで1セットのような気さえする。さらに近くで見ると、白い花の内側に黄色い星が見える。花と花のつなぎ目の部分がほんとに☆の形をしていて、薄黄色をしている。まさに星だ。ここまで単純化してくると、スペードのような葉っぱがだんだんハートに見えてくる。
白い花に、星とハート、コギャル(もう、いないのかな?)が好みそうなデザインだ。でももしコギャルがこぞって、この植物をかばんに絡ませたとしたら、世の中にもっと自然に溢れ、素敵な社会になるだろう。誰か、はやらせてくれないかな。


『ラブラブラブ・・・・・』

 曇りが多い冬から春の夜空から、星を写し取ったように咲くシロバナノアサガオが、ぼくは大好きだ。

*宮古森林組合のある通りで撮影しました
Posted by: kamome カテゴリー: 植物

2006/04/12

『八重干瀬観光上陸』

 先週、サンゴ礁のガイドをした。
1年に3日間、サニツ(旧暦の3月3日)と呼ばれる時期に行われる八重干瀬観光上陸で、サンゴ礁に関する理解を深めてもらうためだ。



 この時期の干潮は、1年の中で一番潮が引く。お月さまが、息の続く限り、海水を吸い込んでいる。普段は、水の中にいるサンゴも、地上へ姿を現すというわけだ。
 この様子が「幻の島」と呼ばれる所以で、船の中は全国各地からの観光客でいっぱいだった。定年退職後らしい夫婦が多く、生きたサンゴをじっくり見たり、触ったりする貴重な機会になっている。

 八重干瀬は、池間島の北に位置する、大小100を超えるサンゴ礁群のことだ。
この海域は、とてもよい漁場になっている。サンゴの隙間や陰には、小さなエビやカニが住んでいる。それを食べる魚が集まってくる。さらに、それを食べる大きい魚が集まってくる・・・という具合だ。
また、海が荒れ、他の場所で漁ができない時でも、サンゴ礁が波を打ち消し、漁を可能にする。地元の漁師は、「海の畑(インヌパリ)」と呼んでいる。まさに、母なる海なのだろう。

 地上に顔を出したサンゴは、どんな気分なのだろうか。
急に水がなくなって、冷や汗をかいているのだろうか。それとも、織姫と彦星のように、この日を待ちわびていたのだろうか。地上に姿を見せることは、サンゴの生存にとって重大な危機なので、生物学的には前者に違いないけれど。


『パラオカメノコキクメイシ』

 ぼくは、ガイドもさることながら、久しぶりの八重干瀬の美しさを心から楽しんだ。キクメイシがエメラルドのように輝いていた。自然界にこんな美しい色があることに驚き、この感動を出会ったばかりの母親くらいの観光客と分かち合った。

 観光上陸には様々な意見があるけれど、実際にサンゴや貝を見、触れることによって、ただ陸上から海を眺める観光よりも、サンゴ礁の海を深く理解してもらえるだろう。そしてその大切さを認識し、沖縄は元より、日本の、地球全体の、はたまた、身のまわりの自然を考えるきっかけになれば、こんなに素晴らしいことはない。
そして、その旅が本当に満足のいくものなら、その人が電波塔になり、周りの人を宮古に導いてくるだろう。
Posted by: kamome カテゴリー: 海

2006/04/05

『植樹祭を終えて』

*このページを初めてお読みになる方は、前回の『タブの森』からお読みください。


 4月2日は、あいにくの雨模様だった。

 植樹する場所には、貸切バスで移動することになっていたので、集合場所の公民館へ向かった。
「大した雨じゃない。」と自分に言い聞かせるために、ワイパーを動かさないで運転していたが、フロントガラスは、すりガラスのように視界を塞いでいた。
 昨晩、遅くまで起きていたせいか、眠くて、体がすこぶるだるかった。
 
 公民館に着いたが、「雨天により延期になりました。」という残念な知らせが届くのを、心のどこかで、期待していた。いや、そうなって欲しいと気持ちが、心の過半数を優に越えていた。

 そんな思いとは裏腹、主催者の奥濱さんからは、中止の「ち」の字もなく、元気な挨拶とともにバスに急いで乗るように言われた。

 バスは、先に進むのをためらうかのように、ゆっくりと動き始めた。主催者の松崎さんの挨拶に続き、講師の仲田先生の話が始まった。
 先生は、何の気なしに、
「今日は、いい日ですねぇ?。こんないい日に植樹ができ、うれしいですね。」
と言った。人間が呼吸する時のように、自然に口から出てきた言葉だった。
 ぼくは、ピストルで撃たれたかのような衝撃を受けた。「パン」という乾いた音が聞こえるほど、強い衝撃だった。
 この言葉の中には、雨中の作業になることへの慰めなど全く感じられず、ただ植えられる植物だけに向けられていた。
 ぼくの目は、二重になるくらいパッチリ見開いた。どんなにずぶ濡れになろうと、植物が喜んでくれるならこんなにうれしいことはないと思った。

 ぼくは、雨の中、小躍する気分で、植え始めた。1mの正方形の真ん中に主木となるタブノキかヤブニッケイを植え、その周りにマサキ・イヌビワ・シマグワ・トベラなど6種類を植えるのだ。土が水分を含んでいて、泥だらけになっていったけど、元気で育つよう願いを込めて、一本一本丁寧に植えていった。

 時間が経つにつれて、天気は回復し、終わりのほうには太陽まで姿を現した。苗木のひとつひとつが輝いて見えた。

 今はか弱く小さな苗だけど、数十年後、豊かな森になることを心から願っている。


『タブ's baby』

仲田先生をはじめ、この会を主催なさった松崎さん・奥濱さんなどに感謝するとともに、深く敬意を表します。
Posted by: kamome カテゴリー: 植物