2006/10/10

『多良間の八月踊り』

 先日、多良間島で行われた伝統あるお祭り、八月踊りを見に行った。

 多良間島は、宮古から定期船で2時間半のところにあり、外周15kmほどの、とても小さな島だ。大部分は、サトウキビ畑と黒牛の放牧地になっていて、のどかな風景が広がっている。
 民家の庭先には、色とりどりの花が咲き、山羊を飼育しているところも多くあった。



*余談ながら、この島の合計特殊出生率3.14人でぶっちぎりの日本一だ! 簡単に言うと、1家族に子供が3人以上いるということだ。
 物質的には決して豊かな島とは言えないけど、元気な子供たちの声があふれるこの島の豊かさは、計り知れない。


『牧草まみれになっている牛』


 さて、八月踊りは、旧暦の8月8,9,10日に行われる。
 1637年から実施された人頭税制度によって苦しみを味わった人々が、奉納踊りをし、納税の苦しみを慰め、祝い楽しんだことが、起源とされている。なんと、350年以上続いている!
 この踊りには、先祖に対する感謝や翌年の豊年になるよう願いも込められているだろう。



 登場人物は、(たぶん)すべての役を男性がこなす。歌舞伎の女形のような役もあるのだ。まだあどけなさを残っている少年が白粉を塗り、踊る姿は、なんとも艶やかで見る人々を魅了していた。




 このお祭りには、島のほとんどの人たちが参加する。みんなで準備し、みなで祝う。小さな子供から、お年寄りまで。
当日、現役を引退したオジーたちは、最前列の桟敷席に座り、泡盛を飲みながら、夢うつつで踊りを見つめていた。オバーたちは、少し高いところで、おしゃべりをしながら眺めていた。

 いろいろなものが、ものすごいスピードで変わって行き、伝統芸能が失われていく中で、この八月踊りは、ますます重要性は高まっていくだろう。
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2006/09/27

『大好きなもの』

 今回で、このエッセイを初めて6ヶ月が過ぎた。
 
 目標としていた、6ヶ月。
 長いようで短いような、いろいろ書いたようで全然書けていないような・・・・、複雑な想いとともに、ふぅーーと息をつく感慨もあったりする。
 
 本を読むのは大好きだったけど、書くことなど初めてのぼくが、曲がりなりにもここまで続けることができた。
 読んでくれている方々、応援してくれた方々、この文章を通して友だちになった方々、いろいろな人に感謝しなければならない。本当にありがとう!

 さて、ぼくは、感じたことや考えたことを、ひとつひとつ文字にして、大切にしたためてきたつもりだ。それは何よりも、大好きな宮古島を、いろんな感動や癒しを与えてくれるこの島の魅力を、自分なりの形で、伝えたいからだ。




  あかばまやのベーグル&スイーツ、佐良浜漁港のカツオ像、
  サトウキビが風に揺れる音、北風が吹いた時の渡口の浜、
  来間島の展望台からの眺め、まるよし食堂のソーキそば、
  マングローブとシオマネキ、インギャーのクセのある波、八重干瀬、
  かもめプリン、ヤドカリの観察、東平安名崎の四季折々の草花、
  海に落ちる夕日、PaniPaniのバジルピザセット、前浜でビーチサッカーやること、
  中之島ビーチ、デズリーのアクセサリー、突き刺さる日差し、クロトン、
  ランタナ、下地プール(下地島空港北西部)、め組のプルコギとチヂミ、
  あかばまやで過ごす時間、インギャーマリンガーデンの黒牛像、
  新城海岸の魚の多さ、茶ノ間の豆のカレー、大野山林で木々の観察をすること、
  満天の星空と流れ星、池間島のロープ&ブロックポイント、
  ボックリーのチョッキの料理とお酒、昔の長間浜、A DISHのパスタ、
  佐良浜展望台に集まるオジーたち、関口さんとの会話、植物園のホウオウボク
  ハーゲンダッツのキャラメルサンド、貝殻拾い、とぅんからやのチキンの香草焼き、
  しっかりと根を張ったガジュマル、保良ビーチとタイヨウスナ、
  さかのファームのパッションフルーツ、アートオブティダのフーチバペースト、
  佐良浜集落の迷路のような街並み、タマシダ、宮古島産マンゴー・・・・



  「ちょう、おいしー」
  「これ、おもしろ?い」
  「すっげぇ、気持ち良い」
  「ちょう、きれい」
  「これ、かわいい」
    ・
    ・

 何かに夢中になって時間を忘れた瞬間、おいしいものを食べて幸せを感じている瞬間、宮古島を流れる空気、自然を触れて感じる生命の尊さ、地球規模の時間の流れ、頬に伝う風の感触、夕暮れの空と海の色、黎明、変わりゆく宮古島、・・・・。



 そんな瞬間を捉えて、書きとめ、これからも、伝えていきたい。

 今まで読んでいただいてほんとにありがとうございます。
 締めの挨拶のようですが、今回で終わるわけではありません。半年間の区切りとして書きたかったのです。
 なお、今後は、毎月10日・20日・30日の月3回、更新します。
 これからもよろしくお願いします。

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2006/09/06

『フラダンス』

 「フラダンスは、究極の手話だよ。」

 友人の良子さんは、ぼくにこう教えてくれた。

 波、風、大地、空、花・・・・・・
 体はもちろん、指先や目線など細かい動きを含め全身で、神々や自然との調和を表現する。
時には、長い髪やスカートの揺れまでも、表現方法のひとつになるらしい。

 ぼくは、もちろんハワイ語の歌詞など全く分からない。
だけど、じっと踊りを見ていると、何を伝えたいのか、なんとなくわかる時がある。



 フラダンスをやってる人たちは、自然をよく理解し、自然に感謝する気持ちを持っていると、ぼくは思う。
 たとえば、花の香りをかぐという動作をするとき、日頃から花に親しんでどんな香りがするか知らなければ、上手にそれを表現することはできないだろう。
 花飾りのレイを自分で摘み取った花で作ったり、舞台の衣装を手作りすることなども、とてもナチュラルな踊りの証だろう。

 宮古島でも、フラダンスをやっている「ANUENUE HSUOLI(アヌエヌエ ハオリ)」というサークルがある。
 彼女たちは週二回、日の出と日の入りの時間に合わせて練習している。朝は東海岸の高野漁港で(なんと朝6時から!!)、夕方は西海岸の与那覇前浜でやっている。優しくも力が溢れる太陽の光を浴びると、とても気持ち良く踊れるそうだ。

 9月12日、来週の火曜日に『UKULELE TIME』というイベントがある。ぼくの大好きな今野英明さんのウクレレライブだ。そこで、「ANUENUE HSUOLI」の皆さんもダンスを披露してくれるそうだ。

 夕暮れ時に、ウクレレとフラダンス。最高のイベントになりそうだ。

   日時:9月12日(火)17:00?(LIVEは19:30?) 
   場所:BAMBOO(アトールエメラルドホテルの側)
   料金:前売り1500円、当日2000円
   連絡先: (Nu fatty)
   *詳しくは、宮古島オンラインのイベント情報をご覧下さい

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2006/08/23

『砂漠の夜の物語』

今回は、都合により書くことができなかったので、以前書いたものを載せたいと思います。宮古のことではないし、少し長いのですが、面白いと思うので、是非読んでください。

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 『あっ、やっぱり負けた。』

 十二月のある夜、僕はモロッコのサハラ砂漠にある安ホテルで、賭けトランプをして遊んでいた。賭けていたのは、ヨーグルト。大した金額ではないが、ここは砂漠のど真ん中、五キロ離れた名もないオアシスまで買いに行かなければならなかった。


『シェビ砂丘』

 僕はちょうど十日前、魅惑的なイスラム世界と広大な砂漠を旅するラクダの隊商に憧れ、初めての海外、初めての一人旅に出た。

 『アラジンと魔法のランプ』『アリババと40人の盗賊』『シンドバットの冒険』・・・幼い頃、胸を躍らせた物語の世界がまだそこにあるような気がしていていた。また、どこかで読んだ文章に、モロッコのサハラ砂漠は世界で一番美しいとあり、それ以来、行き先はモロッコに定まった。

 カサブランカから路線バスを乗り継ぎ、最後は乗合ジープでサハラ砂漠の道無き道を一時間半揺られ、砂丘の目の前のホテルに降りたった。周りの風景は、三六〇度砂と荒れ地の世界、ジープが去った後は耳が聞こえなくなったと思うほどの静寂に包まれた。

 砂漠での生活は、毎日が新鮮だった。テレビもなければ、やることもない。でも何もないことに満足していた。毎日一リットル入りのミネラルウォーターをザックに入れ、定規で引いたようにまっすぐな砂丘の稜線を歩いた。地平線の果てまで続くスケールの大きさ、何時間触っていても飽きない砂の感触、雲一つない地平線に沈む夕日、同じ地球にこんな世界が広がっていることへ驚き通しだった。


『砂丘の稜線』

 ホテルには、僕と井戸の工事をしに来ていたハッサンのほか宿泊している人は誰もいなかった。従業員二人を含めた僕ら四人は、みな同年代ですぐに仲良くなった。夜はきまってランプを囲みながら片言のアラビア語と英語でいろいろなことを話したり、ゲームをして過ごした。


 その夜、僕らはヨーグルトを賭け、二組に分かれてトランプをした。僕とハッサンのチームは、初心者の僕が足を引っ張ったため、負けてしまった。僕たちは、地図にも載っていない小さな集落までヨーグルトを買いに行かなければならなかった。
 新月の夜空には、数え切れないほど星が瞬き、ギリシャ神話の英雄たちを探すのも大変だった。僕は天の川の悠々とした流れに見とれながら、夜のサハラ散歩を楽しんだ。

 ヨーグルトを買い、ホテルへ帰ろうとした時、僕は一瞬、言葉を失った。ホテルが全く見えないのだ。行きは微かな街灯りを頼りに歩いてきたが、帰りはそうはいかなかった。ホテルには電気が通っていないため、どこを目指して帰ればいいのかわからなかった。僕は、帰路のことなど全く考えなかった軽率さに、怒りと情けなさが混じり合ったような気持ちになった。
 ところが、ハッサンは「こっちだ、こっちだ。」と手招きし、真っ暗闇の中をずんずん進んでいった。僕にはただ闇に向かって歩いてるようにしか思えなかった。後ろを付いていくだけの僕の心の中は、だんだん不安になっていった。

  『ハッサンはどこに行こうとしているのか???』
  『こんな砂漠のど真ん中で遭難したら、助かるわけがない。のたれ死んでも誰にも発見されないだろうな・・・。』
  『ハッサンは実は悪いヤツで、誰もいないところへ行って僕の財布を奪おうとしているのか?』

  最後には、
  『ハッサン、命だけは助けてくれ!』と心の中で叫んでいた。
 
 前を行くハッサンの体格は昼間より大きくガッチリ見えた。僕の歩幅はだんだん狭くなり、二人の距離が広がっていった。それに気づいたハッサンは、僕に併せてゆっくり並んで歩きだした。僕は不安をさとられないように、下を向いたまま歩いた。初めて海外旅行をする不安、全く違う生活習慣もった人々への不安、人生がこんなにも簡単に終わってしまうかもしれない不安が次から次へとこみ上げて、胸から溢れそうだった。僕は、止まることも走ることもできず、ただ黙々と歩く以外なかった。


 そんな時だった。ハッサンが僕の左手をギュッとにぎりしめた。彼は不安を感じている僕の気配を感じとって、「だいじょぶだよ」という言葉の替わりに手をつないでくれたのだ。

 ハッサンのゴツゴツした手から、やさしさが伝わってきてた。僕の不安は一瞬のうちに消え、目からは涙があふれだした。今度は恥ずかしくて顔が上げられなかった。僕は、『シュクラン(ありがとう)』と心の中で何度もつぶやいた。


『ハッサン』

 この出来事の後から僕の旅は急に楽になった。人を信じることと疑うことの狭間で揺れ動いていた僕の不安をハッサンが溶かしてくれたからだろう。
 『言葉を使わなくても気持ちは伝わること』、そして『相手を思いやる心は世界共通であること』を僕は教えてもらった。僕はこのことを一生忘れないだろう。ハッサンありがとう。
 そして、世界がもっと平和でありますように!


『夕暮れの砂丘』
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2006/05/10

『ぼくが沖縄に来た理由(1)』

 忘れもしない7年前、大学3年の秋、ぼくは初めて沖縄の地に足を踏み入れた。
当時のぼくは部活、バイトなどいろんなことに疲れていて、とてもつらかった。二宮尊徳のように薪を背負っている気分だった。

 秋の終わりに、やっと肩の荷が下りて、その反動でとても身軽になった気がした。ぼくは無性にどこかに行きたくなった。どこでもいいどこかだった。そしてスカイメイトを握り締め、羽田空港へ向かった。
 そこには、たまたま沖縄行きの最終搭乗案内のアナウンスが流れていて、吸い込まれるように飛行機に乗り込んだ。ゆったりとした大きな河の流れに身を任せてみようと思った。
 今となってはぼくの人生を今につなげる大きなフライトになった。


『IN THE FLIGHT』

 ぼくは、毛布のようなダッフルコートを抱えたまま、那覇空港に降り立った。
一階玄関の自動ドアが「サァーー」っと開いたとき、亜熱帯の暖かさと湿気が体の中に飛び込んできた。今まで吸っていたものとは違う種類の空気だった。出迎えに来ている地元の人たちは、みな凛々しい顔立ちしていた。
 ぼくは、遠いとこまでやってきたと実感した。旅の高揚感と緊張感があいまって、胸の中の噴火したみたいにワクワクしていた。
 
 それ以降、何度も那覇空港に降り立っているけど、あの自動ドアが開くといつも
「ウワ??、とうとう沖縄にやって来た???。」とあの時のワクワク感が鮮明によみがえってくる。一階に下りる階段から到着出口の辺りは、なにか気持ちを高揚させる特殊な舞台装置が仕掛けられているようだ。


『舞台装置』

 宿を探し、荷物を置いたころには、すでに日が暮れかかっていた。時計をみると、東京ではもうネオンが輝いている時間だった。一日が長くなって、得をした気分だ。
 外へ出ると、気持ちよい風が吹いていた。11月の夕暮れ時だというのに、Tシャツ一枚で街を歩くことができた。ぼくは、夕焼けを追いかけるように、西に向かって歩いていった。

 泊大橋のそばで心地よい海風に吹かれていたら、いつのまにか、風が肌になじんでいる気がした。全てが受け入れられ、全てを受け入れている、そんな感覚だった。
 
 今振り返ってみると、この時、沖縄がぼくの特別な場所になった気がする。
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